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逆引き武士語『曲げて』☜「無理を承知で」

『まげて』


「まげて」
とは、道理や意志に反して行動するさま。
「理をまげて」の意。
無理を承知で頼むときに使う。
自分の要望ををなんとか了承してほしいと相手に願う気持ちを表す。
無理でも。是が非でも。なにがなんでも。
「慮外まげて広免し給へかし」

「曲げて」と表記する。
「曲げる」ことをお願いする。
いったい何を「曲げる」のかというと、そちらの事情、道理、意志、面子、などなど、無理に押し曲げ、我慢してご承諾くださいとなる。
「そこをなんとか」というのを「そこを曲げて」という。

☞「現し心なく酔ひたるものに候まげて許し給はらん」
(徒然草・第八十七段)

☞「なにとぞ、なんとか、どうか」という意味では
「ひらに」(平に)も、時代劇でよく聞かれる。
平に御容赦申し上げる」が常套句。

☞両手をつき、頭を地につけて礼をする、ひれ伏すさまを「へいふくする」(平伏する)という。
“平にと平伏”、平つながりで、「平に」には、平伏している姿勢も感じられる。
このイメージから「ひたすら熱心に」という意味も「平に」にはある。
平に申されけり」熱心におっしゃられた。

[一筆余談啓上]

「赤胴鈴之助」というチャンバラ漫画があった。
千葉道場に入門し、父の形見の赤胴をつけていかなる苦難にも負けず、試練を乗り越えて、正義の道を貫いてゆく少年剣士の物語。
ラジオでも放送ドラマ化された。
吉永小百合は、この作品でデビューした。
引き続き放映されたテレビでも、出演していた。
だが、無念にも、あまり見ることができなかった。まだ、当家にテレビジョンがなかったからだ。

たまに、近所の布団店で見せてもらっただけだが、
♪剣をとっては日本一に夢は大きな少年剣士〜なんのまけるか稲妻斬りに散らす火花の一騎打ち♪
の主題歌とともに、
「ええい、猪口才な小僧だ名を名乗れ」
「赤胴鈴之助だー」
の冒頭のセリフは、耳に残っている。
鈴之助の師匠「千葉周作」の名は、
神田お玉が池北辰一刀流千葉道場とともに胸に刻まれた。
長じて千葉周作の人物像を浮き上がらせてくれたのは司馬遼太郎の『北斗の人』だった。
『人の世はたいてい左右いずれとも決め難いことが多い。そのとき当人にかわって覚悟の決定(けつじょう)をうながしてくれる存在のあるなしで、人の幸不幸のわかれることが多い』という一文は、
「わりなき」ことを前にするごとに、反芻している。

ところで、中国漢のころにはすでに航海者は、北斗七星を方向の基準にしていたという。
因みに磁石も「指南針」といってそのころに発明されている。

「猪口才な」(ちょこざいな)=「小生意気な」の意味。「さしでがましい」の意でも用いる。

 

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